小林一茶と歯の悩み
「瘠蛙(やせがえる)負けるな一茶 是(ここ)に有り」
江戸時代後期に活躍した俳人、小林一茶の有名な句です。やさしさとユーモアに満ちた句を生涯2万句も詠んだ一茶は、50歳を前にすべての歯を失ってしまったとか。そのためか歯に関する句も多く残されています。
「歯ぎしみの 拍子ともなり きりぎりす」
これは、まだ歯があったころの句と思われます。歯ぎしりの音ときりぎりすの音色の組み合わせに一茶らしいユーモアが感じられます。
「花げしのふはつくような前歯哉」
前歯が抜けそうになった状態を、芥子の花が揺れる姿にたとえた句ですが、前歯と花げしの絶妙な交感があります。
「歯が抜けて あなたも頼むも あもあみだ」
最後の歯が抜けて、さすがに心細く、阿弥陀仏の慈悲にすがるしかないと思ったのでしょう。神頼みしてもなくなった歯は元に戻りません。すべての歯を失って初めて噛むことの大切さを悟ったのでしょうか?
「かくれ家や 歯のない口で 福は内」
節分の豆まきで、歯が一本もない口で、食べられない豆をまきながら福は内と叫ぶ自身の姿を滑稽にうたっています。
「すりこ木の ような歯茎も 花の春」
江戸時代後期の庶民には、入れ歯はありません。歯ぐきでものを食べるので歯ぐきが固くなり、すりこ木のようになっていたようです。こんな自分にも春がやってきたと茶化しているようです。
ちなみに、松尾芭蕉の晩年の句にも歯を題材にしたものがあります。
「結び上がり はや歯にひびく 泉かな」
「哀いや 歯に食いあてし 海苔の砂」
日本を代表とする歌人にも歯の悩みがあったことがうかがわれます。
幸せなことに、これらの悩みに今の時代歯科医院で適切な処置が可能です。
ともあれ神頼みの前の定期検診、お勧めです。
2013年6月10日 11:40 AM | カテゴリー:医院からのお知らせ